BP、日本の洋上風力でも資産見直し 山形・遊佐沖25%持分売却へ 世界戦略転換の延長線
2026/7/9

英石油大手BPは山形県遊佐町沖の洋上風力発電事業で保有する25%の持分売却に向けた協議を進めている。豪州のグリーン水素事業や米国の陸上風力資産に続く再生可能エネルギー事業の見直しであり、新経営体制の下で資本効率を重視する世界戦略が日本市場にも波及した形だ。
今回の持分見直しは、日本単独の事業判断というよりも、BPが世界規模で進める資産最適化戦略の一環とみられる。
BPは2025年7月、総事業費約360億ドルとされる豪州の大規模グリーン水素プロジェクト「Australian Renewable Energy Hub(AREH)」から撤退し、保有していた63.57%の権益を手放す方針を示した。さらに同月には、米国で保有していた陸上風力発電事業を一括売却した。対象は7州にまたがる10カ所の運転中風力発電所で、総設備容量は約1.7GWに達する。
こうした動きは、2026年に入りさらに加速している。
4月に最高経営責任者(CEO)へ就任したMeg O'Neill氏は、6月に全社的な組織再編を実施した。従来独立していた低炭素エネルギー部門を廃止し、風力・太陽光事業を技術部門へ統合。組織を簡素化するとともに、経営資源をより収益性の高い事業へ重点配分する方針を鮮明にした。
O'Neill氏は組織再編について、「よりシンプルで、より強く、より価値を創出できるBPを目指す」と説明している。
BPは引き続き洋上風力や水素をエネルギー転換戦略の重要分野と位置付けているものの、近年は上流油・ガス事業への投資比重を高める姿勢を示しており、資本配分の優先順位に変化がみられる。
今回の遊佐沖プロジェクトの持分売却も、豪州や米国で進めてきた資産再編と同じ流れの中で捉えることができる。世界的な金利上昇やインフレの長期化を背景に、国際石油会社各社では、低炭素事業への投資効率を改めて精査する動きが広がっている。
一方、日本の洋上風力市場も事業環境が大きく変化している。
政府は2024年以降、物価上昇や資材価格の高騰を踏まえ、公募制度の見直しや価格調整制度などを段階的に導入してきた。しかし、制度改正前に固定価格買取制度(FIT)で落札した案件については、当初の売電価格を前提とした事業運営が続いている。
世界的なインフレやサプライチェーンの混乱に加え、建設費や調達コスト、金利の上昇、円安による輸入機器価格の高騰が重なり、既存案件では収益性の悪化が課題となっている。開発各社では資本効率や投資回収の見直しが避けられない状況だ。
BPによる持分売却の動きは、日本市場固有の問題だけを反映したものではないものの、こうした事業環境の変化も判断材料の一つになった可能性がある。
国際エネルギー企業が投資案件を選別する姿勢を強めるなか、日本の洋上風力市場では、国内事業者が開発主体として果たす役割がこれまで以上に重要になるとの見方もある。
脱炭素投資の拡大が続く一方で、資本効率や財務健全性を重視する流れは世界的に強まっている。BPの一連の資産見直しは、エネルギー転換が新たな局面に入りつつあることを示す事例の一つといえそうだ。
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BPによる遊佐沖プロジェクトの持分売却は、日本の洋上風力市場からの「撤退」と単純に捉えるべきではない。むしろ、国際石油メジャー各社が世界的に進めるポートフォリオ再編の一環として理解する必要がある。
足元では、インフレや高金利、サプライチェーンの混乱によって再生可能エネルギー案件の収益性が低下し、多くの国際エネルギー企業が投資案件の選別を強めている。BPも豪州のグリーン水素事業、米国の陸上風力事業に続き、日本でも資産を見直すことで、より高い投資収益が期待できる分野へ資本を再配分する姿勢を鮮明にしている。
一方、日本政府は洋上風力制度の見直しを進めているものの、初期のFIT制度で落札した案件ではコスト上昇分を十分に吸収できないケースも少なくない。今後は海外資本への依存だけでなく、日本企業による資金調達力や事業運営能力が市場拡大の成否を左右する局面に入ったといえる。
BPの判断は、一企業の投資戦略にとどまらず、日本の洋上風力市場が「導入拡大」から「事業性重視」のフェーズへ移行していることを示す象徴的な出来事ともいえる。
参考資料:Yahoo!Finance, BusinessChief。, WindTAIWAN



