ベスタス、北九州に洋上風力ナセル組立拠点 GX補助金活用、日本製造へ布石
2026/7/13

デンマークの風力発電機メーカー、ベスタスは10日、日本における洋上風力向けナセルの最終組立体制の構築計画が、経済産業省の「GXサプライチェーン構築支援事業」に採択されたと発表した。総事業費は約26億円で、このうち約13億円を国が補助する。福岡県北九州市若松区に専用治具や組立設備を管理・保管する拠点を整備し、日本国内でのサプライチェーン強化を進める。
今回の計画では、現在海外で実施しているナセルの最終組立工程を日本へ段階的に移管する。北九州市に設置する拠点を基盤とし、洋上風力発電所の建設が進む各地のプレアセンブリ港へ専用設備を展開し、プロジェクトごとに最終組立や試験を実施する方針だ。
ただし、同社は投資の実施について、日本の洋上風力市場が持続的に成長することに加え、国内案件でベスタス製風車の採用が一定規模確保されることを前提条件としている。市場環境や受注状況を踏まえながら段階的に事業を進める考えだ。
ベスタスは経済産業省と締結した覚書に基づき、将来的にはナセル最終組立の国内実施を視野に入れている。一方で、同社は「今後の日本市場の状況を見極めながら判断する」としており、現時点で具体的な生産規模や追加投資については未定としている。
長崎計画から方針転換、北九州を供給拠点に
ベスタスは2020年代初頭、長崎県での製造拠点建設を検討していた。しかし、当時想定していた洋上風力案件が政府入札で採択されず、計画は事実上停止していた。
今回の計画では全面的な製造工場ではなく、ナセル最終組立を支える専用治具や設備の管理拠点として北九州市を選定した。市場環境の変化を踏まえ、段階的に国内生産体制を構築する戦略へ転換した形となる。
福岡県の服部誠太郎知事は10日、「地元企業にも風力発電産業へ積極的に参入してほしい」と述べた。県として北九州市と連携し、競争力あるサプライチェーンの構築や事業環境の整備を進める考えを示した。
北九州市の武内和久市長も「国際競争力を持つ都市として評価された。将来的には完全生産拠点としての地位獲得を目指したい」と期待を示した。
国内供給網整備が政策課題に
日本の洋上風力では、風車の大半を海外から輸入しており、円安や資材価格の上昇によるコスト増が事業収益を圧迫している。一般に洋上風力発電所の建設コストの約3〜4割を風車本体が占めるとされ、国内での組立や部品調達の拡大はコスト低減と供給網の安定化につながると期待されている。
政府は洋上風力公募制度を見直し、今後の入札では国内部品や国内サプライチェーンの活用を評価項目として重視する方針を打ち出している。
こうした動きを受け、JFEエンジニアリングは2026年2月から、秋田県沖でJERA連合が進める洋上風力向け基礎部材の国内製造を開始しており、関連産業の集積が徐々に進みつつある。
市場の不透明感なお続く
一方、日本の洋上風力市場を取り巻く事業環境は依然として厳しい。
2025年には三菱商事と中部電力グループが千葉県および秋田県沖の洋上風力事業から撤退。資材価格や風車価格の上昇などによる採算悪化を理由に挙げた。
さらに2026年には、ノルウェーのエクイノールが日本市場からの撤退を表明したほか、英BPも丸紅などと進める山形県遊佐町沖の洋上風力事業からの撤退を検討していることが明らかになり、海外事業者による投資姿勢は慎重さを増している。
ベスタスの今回の投資計画は、日本市場への中長期的な期待を示す一方で、市場拡大や受注確保を条件としている点が特徴だ。政府が進めるGX政策と国内サプライチェーン強化が実際の設備投資や製造機能の本格移管につながるかどうかは、今後の洋上風力案件の進展が大きく左右するとみられる。



