Ocean Winds、仏初の浮体式洋上風力「EFGL」が全面運転 地中海で商業化への転換点

2026/7/21

Ocean Winds、仏初の浮体式洋上風力「EFGL」が全面運転 地中海で商業化への転換点

写真:Ocean Winds


欧州で浮体式洋上風力発電の商業化が新たな段階に入った。洋上風力開発大手のOcean Windsは、フランス南部オクシタニー(Occitanie)地方沖で建設を進めていた浮体式洋上風力発電所「Éoliennes Flottantes du Golfe du Lion(EFGL)」が全面運転(Full Power)に到達したと発表した。同プロジェクトはOcean Windsにとって世界で2基目の営業運転中の浮体式洋上風力発電所であり、フランスでは初の商業運転を開始した浮体式洋上風力案件となる。深海域での実用化を見据えた実証から商業展開への移行を象徴する案件として注目を集めている。


フランスのポール・ラ・ヌーヴェル(Port-La Nouvelle)港から約16km沖合に位置するEFGLは、出力10MW級風車3基(総設備容量30MW)を半潜水式浮体基礎(Semi-submersible Floater)に搭載した浮体式洋上風力発電所である。Ocean Windsとフランスの公的投資機関Banque des Territoiresが共同開発し、水深が深い地中海沿岸での商業規模導入に向けた技術・建設・運転ノウハウの蓄積を目的として建設された。


発電所は年間約11万MWhの再生可能電力を供給し、およそ5万人分の年間電力需要を賄う能力を持つ。想定運転期間は20年間としており、Ocean Windsは同港に専用の運転・保守(O&M)拠点を整備した。現在は20人以上の地元雇用を支え、港湾都市ポール・ラ・ヌーヴェルに長期的な経済効果をもたらすとしている。


サプライチェーンの現地化も大きな特徴だ。直接取引先の99%を欧州企業が占め、そのうち85%はフランス企業またはフランス国内に拠点を持つ企業となっている。また、約60%が中小企業(SME)で構成されており、浮体式洋上風力の産業基盤を地域経済と結び付けるモデルケースとして位置付けられている。


Ocean WindsのCraig Windram CEOは、「フランスのような深海域を有する国では、浮体式洋上風力が将来のエネルギーミックスにおいて重要な役割を果たす。EFGLの全面運転は、複雑な浮体式プロジェクトを安全かつ効率的に実現できる当社の技術力と、地域・行政・産業界との協力体制を示す成果だ」とコメントした。


また、Ocean Windsフランス法人のMarc Hirt社長は、「浮体式洋上風力はもはや将来技術ではなく、フランスで実際に稼働するインフラとなった。EFGLはフランスおよび欧州のサプライチェーンが培ってきた技術力を示すとともに、地中海が今後の浮体式洋上風力市場の中核地域となる可能性を示している」と述べた。


環境面では、生物多様性との共生を目指す設計も導入した。地元企業Ecoceanが開発した人工海洋生息地「Biohuts©」を浮体構造物へ組み込むなど、海洋生態系の保全を考慮した「Nature-inclusive(自然共生型)」設計を採用しており、Ocean Windsは世界初の自然共生型浮体式洋上風力発電所としている。


地中海は浮体式洋上風力の次なる成長市場に


地中海沿岸では、水深50メートルを超える海域が広範囲に広がることから、着床式洋上風力の適地は限られる。一方、浮体式技術は深海域への設置が可能であり、フランス、イタリア、スペインなどでは次世代の洋上風力開発手法として位置付けられている。


近年は浮体基礎技術の成熟に加え、港湾整備やサプライチェーンの形成、政策支援も進みつつあり、欧州では商業規模案件への投資が本格化している。EFGLの全面運転は、実証プロジェクトの成果を商業開発へつなげる重要な節目であり、今後計画される数百MW級の浮体式洋上風力案件に向けた技術・運営モデルとしての役割も期待される。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


EFGLの規模は30MWと限定的だが、その意義は発電容量以上に大きい。従来の浮体式洋上風力は実証段階にとどまる案件が多かったが、今回の全面運転は「実証から商業化への橋渡し」を象徴する事例といえる。


特に注目されるのは、フランス国内を中心としたサプライチェーンの構築、港湾を核とした地域経済への波及、自然共生型設計の導入を一体で実現した点だ。欧州では今後、地中海や大西洋の深海域を対象にGW級の浮体式洋上風力開発が見込まれており、EFGLはその標準モデルとして位置付けられる可能性が高い。


日本でもEEZ(排他的経済水域)の活用や浮体式洋上風力の制度整備が進むなか、EFGLの経験は、技術実証だけでなく地域産業育成や港湾活用を含めた事業設計の参考事例となりそうだ。


 

参考資料:Ocean Winds, Ocean News & Technology (ON&T), Renewable Energy Magazine

このコンテンツはWindTAIWANにて公開されたものであり、

ENERGYNIPPONとのコラボレーションにより共有されています。

前のページに戻る
台湾欧州商会、電力網強化と電源多様化を提言 エネルギー強靱化を安保の柱に
By info • 2026年10月19日
台湾欧州商会(ECCT)は、エネルギー供給の強靱化が経済競争力や国家安全保障を支えると指摘。台湾に電力網の近代化、再生可能エネルギーや蓄電池の活用、電源の多様化を促し、既存の低炭素技術の普及と新技術への投資を提言した。
住友商事グローバルメタルズ、アイルランド企業と提携 浮体式風力の係留コスト低減へ
By info • 2026年10月19日
住友商事グローバルメタルズがアイルランドのTFI Marineと提携。浮体式洋上風力向けデバイス「SeaSpring」で係留システムの荷重や劣化を抑え、コスト低減と長寿命化を目指す。日本での導入拡大を見据え、係留部材の供給網構築を進める。
台湾の浮体式洋上風力、商用化へ政策・技術・供給網が鍵 船舶海洋産業研究開発センターは曳航シミュレーターを開発
By info • 2026年10月16日
台湾の浮体式洋上風力の商用化に向け、ABSが政策・資金支援、技術革新、サプライチェーン整備の重要性を指摘。船舶海洋産業研究開発センターは、風・波・潮流を再現する曳航シミュレーターを開発し、作業の安全性向上と事故リスク低減を支援する。