日本、過酷海域で浮体式洋上風力の実証へ 水深500m超で技術確立、アジア展開を視野

2026/7/17

日本、過酷海域で浮体式洋上風力の実証へ 水深500m超で技術確立、アジア展開を視野

写真:五島洋上ウィンドファーム


経済産業省は7月15日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を通じて、過酷な海象・地盤条件に対応する浮体式洋上風力発電の実証候補海域について、都道府県からの公募を開始した。


水深500メートル超や岩盤地盤、高波浪といった世界でも実証例の少ない環境で技術を確立し、低コスト化と量産化を進めることで、日本の排他的経済水域(EEZ)やアジア太平洋市場への展開を加速させる狙いだ。


政府は2040年までに国内事業者が世界で30GW規模の洋上風力開発に関与する目標を掲げている。浮体式洋上風力についても商用化を見据えた技術開発を進めており、今回の実証はその中核となるプロジェクトに位置付けられる。


世界でも例の少ない「過酷海域」で技術を磨く


日本では現在、秋田県南部沖と愛知県田原市・豊橋市沖の2海域で浮体式洋上風力の実証事業が進められている。一方、国内で大きな導入ポテンシャルを持つ海域の多くは、水深が深く、急峻な海底地形や岩盤、高波浪など施工・運用の難易度が高い。


こうした条件は日本特有の課題である一方、今後市場拡大が見込まれるアジア太平洋地域とも共通する。経済産業省は、こうした過酷環境下で実証を行うことで、日本発の技術や設計・施工ノウハウを確立し、国際競争力の強化につなげたい考えだ。


水深500m超・高風速・岩盤海域を公募


今回の公募では、都道府県から10月30日まで候補海域の情報提供を受け付け、2026年中を目途に実証海域を1カ所選定する。


候補海域には、水深500メートル以上の区域を含むことに加え、年平均風速8.5m/s以上、海底の一部または全部が岩盤であることなど、厳しい条件が設定された。また、漁業関係者や船舶運航事業者との合意形成が図られていることも必須要件となる。



さらに、将来的な商用化を見据え、240MW規模のウインドファームを設置できる約50平方キロメートルの隣接海域を数年以内に確保できる見込みや、長期間利用できるテストセンターとして活用できることも求められる。


実証では、平均風速10m/s級の環境での風車荷重や疲労評価、高波浪下における施工・保守(O&M)の効率化、急勾配や岩盤地盤に対応するアンカー工法などを検証する計画だ。


共通基盤技術を実海域で検証


今回の実証では、FLOWRAが共通基盤技術として研究開発を進める大水深向けの係留・アンカー技術やダイナミックケーブルなどについても、実海域で性能や施工性を検証する。


経済産業省は、海域選定後に発電事業者を公募し、グリーンイノベーション(GI)基金を活用して事業費の3分の2を補助する方針で、2027年度以降に実証事業を開始する予定だ。


20基規模、300MW実証も視野


政府は今回の実証を、単なる技術検証にとどめず、将来的な商用化への橋渡しと位置付けている。


実証海域では将来的に20基程度まで規模を拡大できる環境を想定しており、中長期的には約30万kW(300MW)規模の中規模実証プロジェクトの組成も検討する。従来の1〜2基規模の実証から一段階スケールアップすることで、量産化やコスト低減効果を検証し、国内サプライチェーンの競争力向上につなげる考えだ。


また、実証終了後も海域を恒久的なテストセンターとして活用し、新技術の評価や国際共同研究を継続する構想も打ち出した。欧州では常設の実証サイトを活用した技術開発が進んでいる一方、日本では実証ごとに海域調整が必要となるため、開発期間の長期化が課題となっている。


海外市場を見据えた「日本モデル」の確立へ


浮体式洋上風力は、着床式では開発が難しい大水深海域でも導入できる次世代技術として期待される。政府は6月に英国との技術協力枠組みを立ち上げるなど、国際連携も強化している。


一方で、超大水深での係留技術や浮体式洋上変電設備、特殊工事船の確保、高度な施工・保守人材の育成など、商用化に向けた課題は依然として多い。今回の実証では、これらの技術課題に加え、施工基準や国際規格の整備も視野に入れ、日本発の技術標準を世界市場へ展開できるかが今後の焦点となる。

 




参考資料:経済産業省資源エネルギー庁新エネルギー課⾵⼒政策室NIKKEIWIND JOURNAL



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