韓国洋上風力、政府主導で25GW選定 「許可」から「建設可能性」重視へ

2026/9/8

韓国洋上風力、政府主導で25GW選定 「許可」から「建設可能性」重視へ

韓国の韓聖淑(ハン・ソンスク)首相は9月2日、初の「洋上風力発電委員会」を主宰した。画像出典:韓国首相公式SNS


韓国政府は洋上風力発電の開発方式を、事業者が個別に海域を確保する従来型から、政府が適地を選定する「計画立地」方式へ転換する。2031年までに合計25ギガワット(GW)の「予備地区」を指定し、このうち約20GWを発電地区の入札などにつなげる。許認可や地域調整を前倒しすることで開発リスクを抑える狙いだが、送電網や港湾、事業採算性の確保が実現のカギとなる。


韓国の韓聖淑(ハン・ソンスク)首相は9月2日、政府ソウル庁舎で初の「洋上風力発電委員会」を開いた。会合では、洋上風力の主な推進実績と計画立地制度の導入案を審議した。

新制度では、政府が風況や自然環境、漁業活動、船舶交通、軍事作戦などの情報を集約し、開発に適した海域をあらかじめ選定する。その後、地方政府が住民や漁業関係者との協議を進め、基本設計や環境面の検討を経て発電地区を指定する。事業者は競争入札で選ぶ。

従来は開発事業者が自ら候補海域を探し、住民との調整や各種許認可の取得を進めていた。手続きの長期化に加え、事業の途中で軍事レーダーや漁業、環境上の制約が判明するケースもあり、開発リスクを高める要因となっていた。

政府は2026年中に2~3GW規模の最初の予備地区を指定する方針だ。その後、基本設計や環境性の検討、地方政府主導の官民協議会などを経て、早ければ2033年から計画立地方式による案件の建設を始める。


許可容量と稼働容量に大きな差

制度改革の背景には、事業許可を得た容量と実際の導入量の大きな隔たりがある。韓国では洋上風力の発電事業許可を取得した案件が約33GWに達する一方、実際に稼働している設備は約0.37GWにとどまる。


案件が初期段階の許可を取得しても、その後の行政手続きや地域との調整、送電網への接続、港湾・作業船などのインフラ確保に時間を要し、着工まで進まない例が少なくない。これまで韓国が積み上げてきたのは、必ずしも建設可能な案件ではなく「許可容量」だったともいえる。


政府は新制度のもとで、事業者を選定する前に関係省庁が主要な許認可事項を点検する。事業者選定後は洋上風力法に基づき、28の関連法にまたがる42項目の許認可を一括処理できるようにする。開発期間を短縮し、事業者が多額の初期費用を投じた後に計画の見直しを迫られるリスクを減らす。


政府は、計画立地によって事業者の前期調査費用や開発リスクが軽減されることを踏まえ、発電地区を対象とする競争入札の上限価格を、従来の入札より低く設定する方針だ。発電コストや公的負担の抑制を狙う一方、上限価格が建設費や金利、為替変動を十分に反映しなければ、事業者の入札意欲や案件の採算性を損なう可能性がある。


地方政府が住民・漁業者と協議

地域との合意形成では、地方政府が主導する官民協議会を設ける。計画の初期段階から住民や漁業関係者が参加し、地域への利益還元や漁業との共存策を検討する。


政府主導への転換は、開発リスクをなくすというより、その一部を個別事業者から中央・地方政府の計画段階へ移す取り組みと位置付けられる。官民協議会が形式的な意見聴取にとどまらず、利益共有の方法や地域の参加条件を具体化できるかが問われる。


新安・牛耳島や安馬などの洋上風力案件では、施工計画や軍事レーダー、サプライチェーンを巡る問題が浮上した。政府には、こうした論点を事業者選定前に整理し、開発の不確実性を抑える狙いがある。


2035年までの入札は55GW

韓国政府は洋上風力の累計導入量を2030年に3.1GW、2035年に25GW、2040年に45GWへ引き上げる青写真を描く。


気候エネルギー環境省が7月に公表した中長期入札計画では、2026~35年に合計55GWの洋上風力入札を実施する。原則として毎年4GW以上を公募する。このうち31GWは2033年までに固定価格競争入札で選定する。これとは別に、政府が指定する発電地区を対象とした競争入札を2029年下期から導入し、2035年までに計24GWを公募する。一方、計画立地制度では、2031年までに計25GWの予備地区を指定し、このうち約20GWを追加の洋上風力導入につなげる方針だ。


10年間の入札量を示すことで、開発事業者だけでなく、金融機関や風車・基礎・海底ケーブル、造船などの関連企業が設備投資を計画しやすくする。韓国政府は洋上風力を、クリーン電力の供給源であると同時に、造船、鉄鋼、電線、海洋エンジニアリング産業を育成する政策手段と位置付ける。


一方、入札容量の拡大だけで投資が進むとは限らない。資材価格や金利、為替の変動を反映できる価格制度に加え、系統接続の時期、港湾や作業船の確保も事業性を左右する。入札価格を過度に抑えれば、落札後に採算が悪化し、計画が停滞する可能性もある。

韓国は計画立地制度によって、候補海域の選定や許認可手続きに政府主導で取り組む姿勢を鮮明にした。今後は送電網、港湾、地域合意、資金調達を同じ速度で整備できるかが焦点となる。25GWの予備地区が実際の着工や発電につながるかどうかは、指定容量ではなく、最終投資決定や系統接続に到達した案件の規模で判断する必要がある。



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