北九州響灘洋上ウインドファームが稼働 国内最大22万kW
2026/3/13

(写真:北九州響灘洋上ウインドファーム。風車羽根の最高点は海水面から約200m)
電源開発(Jパワー)や九州電力子会社の九電みらいエナジーなどが出資する洋上風力発電所「北九州響灘洋上ウインドファーム」(北九州市)が3月2日、営業運転を開始した。総出力は22万キロワットで、稼働時点では国内最大の洋上風力発電所となる。国内洋上風力発電設備容量の約4割を占める規模となる。
同プロジェクトは、北九州市が実施した「響灘洋上風力発電施設の設置・運営事業者」公募において、2017年2月にJパワーなどが参画するコンソーシアムが事業実施予定者として選定されたもの。事業会社であるひびきウインドエナジーが開発を進め、2023年3月に建設工事に着手した。
発電所には出力9,600キロワット級の大型風車25基を設置。総出力は22万キロワットで、年間発電量は約5億キロワット時を見込む。これは一般家庭約17万世帯分、北九州市の世帯数のおよそ4割に相当する電力を供給できる規模となる。
発電所の運転・管理はひびきウインドエナジーが担う。同社にはJパワーが40%、九電みらいエナジーが30%を出資するほか、風力発電設備の保守を手がける北拓、西部ガス、クラフティア(旧九電工)がそれぞれ10%ずつ出資している。
風力発電所では出資比率が公表されないケースも多く、企業ごとの保有出力を厳密に算出することは難しいとされるが、九州電力グループは同施設の稼働により約8万8000キロワットの出力を確保し、国内でも有数の洋上風力事業者の一つになるとみられている。
洋上風力を巡っては、世界的な資材価格や建設コストの高騰が事業環境に影響を及ぼしている。また、三菱商事と中部電力は、千葉県沖や秋田県沖の3海域で進めていた洋上風力発電計画から撤退を表明するなど、固定価格買い取り制度(FIT)を前提に低価格で落札した案件では採算性の確保が課題となっている。
一方、響灘プロジェクトでは当初の総投資額約1700億円の段階で資材価格の上昇を織り込んでいた。鋼材価格の高騰に対しては、風車基礎に使用する鋼板の厚みを設置地点ごとの海底条件に応じて調整するなど、設計面での合理化を図り、全体の鋼材使用量の削減に取り組んだ。
また、設計や施工では日本特有の地震や津波を想定した構造設計や、複雑な海底地盤に基礎を固定する技術など、日本の海域条件に対応したノウハウも蓄積された。九電みらいエナジーは、建設や設計のほか、港湾区域内での設置・運転に関する漁業関係者との調整や、大規模洋上風力のプロジェクトファイナンス構築などの経験も今後の事業展開に生かせるとみている。
北九州市の武内和久市長は「産業と環境を両立させ、日本のエネルギー自立につながる歴史的な一歩だ」と述べ、東アジアの洋上風力市場の拡大を見据えた総合拠点化を目指す考えを示した。市は2026年度当初予算案に洋上風力のサプライチェーン構築関連費として約3億700万円を計上している。
政府の第7次エネルギー基本計画では、2040年度の発電電力量に占める風力発電の割合を現在の約1.1%から4〜8%へ引き上げる方針を掲げており、洋上風力の導入拡大が重要な柱となっている。
今回稼働した響灘の発電所は、風車基礎を海底に固定する「着床式」洋上風力だが、今後は沖合に構造物を浮かべる浮体式洋上風力の導入拡大も見込まれる。北九州市は響灘地区を浮体式洋上風力の総合拠点とする構想を進めており、九電みらいエナジーも風況観測技術の研究を進めるなど、将来の市場拡大を見据えた取り組みを進めている。
こうした中、響灘プロジェクトの商業運転開始は、日本の洋上風力市場が実証・建設段階から本格的な発電事業フェーズへ移行しつつあることを示す象徴的な案件ともいえる。今後の洋上風力プロジェクトの開発やサプライチェーン形成にも一定の影響を与える可能性がある。
参考資料:Jパワープレスリリース、日本経済新聞



