燃料電池、商用化フェーズへ 台湾がAI・半導体向け導入を加速
2026/6/19

第三者認証機関のドイツ・テュフ ラインランド(TÜV Rheinland)は5月下旬、台北で「水素エネルギー新市場の展望―燃料電池発電システムの市場動向と認証の重要性」をテーマとしたフォーラムを開催した。
会合には台湾経済部能源署(エネルギー署)、オーストラリア弁事処、BloombergNEF、工業技術研究院(ITRI)などの産官学関係者が参加し、政策支援から国際投資、市場参入戦略、安全認証まで、燃料電池発電システムを取り巻く最新動向について議論した。
AI・半導体需要を背景に商用化が加速
燃料電池と聞くと、依然として実証事業や特定のモビリティ用途を想起する向きが多い。しかし台湾では現在、定置型燃料電池発電システムの商業利用が新たな段階へ入りつつある。
経済部能源署石油・ガス発展管理組の蔡秀芬組長は、短期的には分散型電源としての水素利用拡大を重点施策として推進していると説明した。特にAI産業、データセンター、半導体製造、高エネルギー消費型産業を優先導入分野に位置付けており、燃料電池発電システムが研究開発や実証の段階から本格的な商用市場へ移行しつつあるとの認識を示した。
台湾政府は水素を国家の「12項目重点戦略産業」の一つに位置付けている。2050年には総発電量に占める水素由来電力の割合を9〜12%へ引き上げる目標を掲げており、その実現に向けて定置型燃料電池発電システムへの補助制度を拡充している。
新制度では2MW以上の大型案件も対象とし、設備容量1kW当たり最大7万台湾ドルの補助を提供する。企業による自家発電比率の向上と、大規模商業プロジェクトの早期導入を後押しする狙いだ。
豪州との連携に商機
一方で、エネルギー供給の約97%を輸入に依存する台湾にとって、水素需要拡大に伴う安定供給の確保は大きな課題となる。
フォーラムでは、オーストラリア弁事処商務処の劉怡均シニア・インベストメント・ディレクターが、豪州政府の水素戦略を紹介した。豪州は100億豪ドルを超える直接投資を実施しているほか、水素関連を含む再生可能エネルギー支援策の総額は400億豪ドルを上回る。2050年には年間1,500万〜3,000万トンのグリーン水素生産を目指している。
広大な土地と豊富な太陽光・風力資源を有する豪州は、再生可能エネルギー由来のグリーン水素やグリーンアンモニアの供給拠点として期待される。一方で、豪州国内では長距離輸送、鉱山開発、非常用電源などの分野で脱炭素需要が拡大している。
こうした状況は、水素関連機器や燃料電池システムで強みを持つ台湾企業にとって、輸出や技術協力の機会を広げる可能性がある。水素サプライチェーン構築に向けた台豪連携は、今後の注目分野となりそうだ。
商用化の鍵握る安全認証
もっとも、水素ビジネスの拡大には安全性の確保が不可欠である。
水素は分子サイズが極めて小さく、漏洩しやすいうえ可燃性も高い。豪州で製造された水素を台湾へ輸送し、PEMFC(固体高分子形燃料電池)やSOFC(固体酸化物形燃料電池)に供給するまでの各工程では、防爆設計やガス検知、機能安全などの厳格な管理が求められる。
テュフ ラインランドの黄思銘シニアプロジェクトエンジニアは、燃料電池発電システムの防爆設計と安全評価について解説した。危険区域の分類、着火源管理、換気設計、防爆機器の適用性評価、ガス検知システムおよび緊急停止機構などが重要な要件になるという。
燃料電池市場が本格的な商用フェーズへ移行する中、設備性能だけでなく、安全認証や国際規格への適合が市場参入の前提条件となりつつある。今後は水素供給網の整備と並行して、第三者認証を活用した安全・品質保証体制の構築が、産業拡大の成否を左右することになりそうだ。
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AIデータセンターや半導体工場の電力需要拡大を背景に、台湾では再生可能エネルギーだけでは補いきれない安定電源への関心が高まっている。定置型燃料電池は、脱炭素と電力安定供給を両立できる選択肢として注目度を増している。
ただし、燃料電池の普及は発電設備単体の競争ではなく、水素製造・輸送・貯蔵・利用を一体化したサプライチェーン構築が前提となる。豪州との連携はその重要な一歩となる一方、安全認証や国際規格への適合が企業の競争力を左右する時代が到来している。台湾企業にとっては、水素機器の製造能力だけでなく、グローバル市場で通用する安全性と信頼性の確保が新たな競争軸となりそうだ。
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