水からの知恵、地に根ざす戦略――経済部常務次官・賴建信が語る、治水からエネルギー政策へと繋がる対話の哲学

2025/10/7


台湾が直面するエネルギー課題は深刻だ。2024年時点でエネルギー輸入依存度は95.16%に達し、特に石油や天然ガスへの依存はほぼ100%という状況にある。再生可能エネルギーの導入が急がれる中、政策の信頼性や社会との合意形成がこれまで以上に問われている。


この難局において注目を集めているのが、経済部常務次官・賴建信の取り組みだ。かつて921大地震の現場で治水事業を指揮し、水利の分野で豊富な実績を持つ彼は、現在エネルギー政策における「社会的対話」の推進役を担っている。就任以来、複数の対話型会議を主導し、政府のエネルギー政策やプロジェクトを透明化し、業界、環境団体、地域住民を巻き込んだ協働の場を構築してきた。


彼のアプローチの核心にあるのは、「治水」に通じる考え方だ。自然環境や地形の特性を読み解き、無理なく調和させながら最適解を探るその手法は、エネルギー分野においても有効だと語る。たとえば、全国の水利インフラを活用した「小水力発電」のポテンシャルは高く、すでに複数の発電所が稼働を開始。今後も数十ヵ所の開発が進められる見込みだ。


一方で、民間事業者が参入する際には法規制や行政手続き、地域との合意形成といった障壁が立ちはだかる。そこで賴は、水利署と連携し、ガイドラインの整備や行政の支援体制づくりを進め、政策の実効性を高めようとしている。



「防弊」ばかりを重視した旧来型のガバナンスでは、複雑化するエネルギー政策に対応できない。賴建信は、政策の透明性と社会的信頼の回復こそがグリーンエネルギーの基盤になると考える。治水からエネルギーへ。彼の提唱する「水からの知恵、地に根ざす戦略」は、台湾のエネルギー転換における新たな道筋となりつつある。



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