台湾から始まる“海の送電革命”――国産海底ケーブルで挑むエネルギー安全保障と産業競争力の両立
Walsin Energy Cable System(WECS)の挑戦

2025/10/7


地政学リスクや再生可能エネルギーの台頭を背景に、世界中で海底電纜(海底ケーブル)への需要が急増している。市場調査機関の報告によれば、2025年にはグローバル市場が220億ドルを超え、2034年には約550億ドルに達する見込みだ。通信インフラや5G展開に加え、特に大きな牽引役となっているのが、洋上風力をはじめとする再エネ関連プロジェクトによる送電ニーズの拡大である。


そうした中、台湾でも国産海底ケーブル製造の幕が開けた。2023年、老舗ケーブルメーカーである華新麗華(Walsin Lihwa)は、デンマークの世界的電力ケーブル企業NKTと合弁で「華新能源電纜系統股份有限公司(WECS)」を設立。台灣初の本格的な海底ケーブル製造拠点として、深水港に隣接する高雄に新工場を建設中だ。


参入の決め手は3つ。第一にアジア市場、特に台湾の洋上風力産業の成熟度。第二に深水港近くに十分な敷地を確保できたこと。そして第三に、技術・信頼の両面で理念を共有できるパートナー=NKTとの出会いである。
「産業とは数十年単位で見なければならない。政府によるエネルギー転換政策の後押しもあるが、何より重要なのは長期的な事業の持続可能性だ」と、WECSのCOO 王維熊(Justin Wang)は語る。


海底ケーブルは一般的な電線よりも技術的要求が極めて高く、世界市場は欧州大手数社による寡占状態にある。台湾がこれまで自国で製造できなかったのも、その技術・設備・信頼性の壁ゆえだ。しかし、逆にいえば国内で製造能力を持つことは、エネルギー安全保障上の大きなアドバンテージになる。


同社副総の劉忠祐(Kevin Liu)も、「これはもはや単なる産業競争ではない。台湾が地政学的リスクや国際供給網の寸断に対抗するための“戦略技術”の確保であり、安全保障の一環だ」と強調する。


NKTとの協業も単なる技術移転では終わらない。工場設計の段階からNKTが全面協力し、最新のヨーロッパ基準を反映した「アジア随一の海底ケーブル工場」を目指している。欧州にあるNKTの既存工場が拡張型(brownfield)であるのに対し、台湾工場は白紙からの新設である分、理想的な生産ラインと物流動線の構築が可能だ。


離岸風電(洋上風力)の拡大が続く中、送電インフラの整備はプロジェクト全体の成功を左右する“背骨”とも言える領域。台湾発・MITブランドの海底ケーブルが、このアジアの再エネ革命を支える新たな柱となる日は遠くない。




このコンテンツはWindTAIWANにて公開されたものであり、

ENERGYNIPPONとのコラボレーションにより共有されています。

前のページに戻る
東洋建設、国内最大級のケーブル敷設船「DISCOVERY」を受領 300億円投じ洋上風力施工体制を強化
By info 2026年7月3日
東洋建設が約300億円を投じて建造した国内最大級の自航式ケーブル敷設船「DISCOVERY」を受領。洋上風力発電向け海底ケーブル施工能力を強化し、浮体式洋上風力やHVDCなど次世代市場への対応を加速する。
量子ドット太陽電池、実用化へ前進 低コスト印刷技術で次世代市場に挑む
By info 2026年7月3日
量子ドット太陽電池の実用化に向け、電気通信大学が低コストかつ高安定性のインク技術を開発。ペロブスカイトに続く次世代太陽電池として、タンデムセルやBIPVなど幅広い応用への期待が高まっている。
トルコ、初の洋上風力1GW入札案を公表 事業撤退オプション導入で投資リスク軽減へ
By info 2026年6月30日
トルコ政府が初の1GW洋上風力入札案を公表。事業返還オプションやネガティブビッド導入など柔軟な制度設計を採用し、2035年までの5GW導入目標に向けた市場形成を加速する。