DEME・五洋建設連合、日本初の15MW級洋上風車設置へ 施工体制の国産化も前進

2026/6/3

DEME・五洋建設連合、日本初の15MW級洋上風車設置へ 施工体制の国産化も前進

SEP船「Sea Challenger」。写真提供:DEME


日本初の15MW級風車導入へ、SEP船の国産運用体制も前進


秋田県沖で進む「男鹿・潟上・秋田洋上風力発電事業」が、日本の洋上風力産業の成熟度を測る重要な試金石となりそうだ。ベルギーの海洋エンジニアリング大手DEMEと五洋建設の合弁会社であるジャパンオフショアマリン(Japan Offshore Marine, JOM)は、事業主体の男鹿・潟上・秋田Offshore Green Energy合同会社向けに、洋上風車設置工事を担う契約を獲得した。2027年後半から洋上施工を開始し、2028年6月の運転開始を目指す。

 

同事業は総出力315MW規模で、Vestas製15MW級風車21基を設置する計画だ。15MWクラスの大型洋上風車が日本国内で導入されるのは初めてとなるほか、中国を除く欧州域外においても先行事例が限られる。風車の大型化が進む世界市場の潮流の中で、日本も次世代機の導入段階へと移行しつつあることを示している。

 

「Sea Challenger」日本船籍化で施工能力を強化

 

今回のプロジェクトで中核を担うのが、SEP船(Self-Elevating Platform)「Sea Challenger」だ。もともとDEMEが保有していた同船は、現在JOMの運用体制へ移行しており、15MW級風車への対応を目的とした大規模改修を完了している。

 

改修ではクレーン吊上能力を900トンから1,600トンへ増強したほか、船体幅の拡張やレグ(脚部)の延長を実施。大型化する洋上風車の施工ニーズに対応できる仕様へと進化した。2026年度中には日本船籍への切り替えを予定しており、日本国内で稼働する大型風車設置専用船として本格運用が始まる見通しだ。

 

日本では洋上風力市場の拡大に対して、施工船不足が長年の課題とされてきた。特に大型SEP船の確保は事業リスクの一つとされ、欧州船舶への依存が続いていた。今回の日本船籍化は、単なる一案件への対応にとどまらず、国内施工体制の強化という観点からも大きな意味を持つ。

 

洋上風力の「ボトルネック解消」へ

 

五洋建設はすでに、鹿島建設および寄神建設と共同保有する1,600トン吊SEP船「CP-16001」を運用している。同船は男鹿・潟上・秋田プロジェクトにおいて風車基礎工事を担当する予定だ。

 

今後、「CP-16001」と「Sea Challenger」の2隻体制が実現すれば、日本国内で複数案件が同時進行する洋上風力市場において、施工能力の拡充につながる。政府が2040年に向けて洋上風力の大規模導入を進める中、建設船舶の不足はサプライチェーン全体のボトルネックとして指摘されてきた。国内で大型SEP船を複数運用できる体制は、こうした課題解決への重要な一歩となる。

 

DEME、日本市場で長期展開を本格化

 

今回の契約は、DEMEにとっても日本市場での存在感を高める節目となる。

 

JOMは東京を拠点とし、DEMEが欧州で培った洋上風力施工技術と、五洋建設の海洋土木分野における国内ネットワークを組み合わせることで、日本市場向けの施工体制構築を進めてきた。

 

DEMEはこれまで欧州を中心に数多くの洋上風力案件を手掛けてきたが、日本では制度整備の遅れや施工環境の違いから、本格参入には一定の時間を要していた。今回の受注により、JOMが実運用フェーズへ移行したことが明確になり、今後の国内大型案件への参画拡大も視野に入る。

 

また、施工船の現地保有や日本船籍化、国内人材の育成などを通じて、日本市場に根差した事業基盤を形成しようとする動きは、従来の単発的な海外企業参入モデルとは一線を画している。

 

秋田沖案件が示す日本洋上風力の次段階

 

日本の洋上風力市場は、近年の物価高騰やサプライチェーン混乱、事業採算性の悪化などを背景に、一部案件で計画見直しが相次いでいる。一方で、男鹿・潟上・秋田プロジェクトは、次世代大型風車の採用と施工能力の強化を同時に進める象徴的な案件として位置付けられる。

 

洋上風力の競争力は、発電設備そのものだけでなく、施工船や港湾、人材を含めた産業基盤の整備によって左右される。今回のJOMによる受注と大型SEP船の日本船籍化は、日本が洋上風力の「導入市場」から「産業形成市場」へ移行できるかを占う重要な動きとして注目される。



資料参考:DredgeWire五洋建設株式会社DEME


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