PSPIB、台湾洋上風力「海能風電」の共同支配権取得へ EUが無条件承認
2026/8/6
欧州委員会(EC)は、カナダの公共部門年金投資委員会(Public Sector Pension Investment Board、PSPIB)が台湾の洋上風力発電所「海能風電(Formosa 2)」の共同支配権を取得する取引を、EU合併規則に基づき無条件で承認した。欧州経済領域(EEA)における競争への影響が限定的と判断し、簡易審査手続きで認可した。
今回の取引は、Stonepeak傘下の関連投資ビークルが保有していた権益をPSPIBが承継する形となる。既存の風力発電所の運営体制や事業継続には影響しない見通しだ。
現在、海能風電の持分は風睿能源(Synera Renewable Energy)が51%、JERA Nex bpが49%を保有している。JERA Nex bpは、日本のJERAと英BPによる洋上風力合弁会社である。取引完了後は、PSPIBとJERA Nex bpが共同支配権を持つ構造となる。取引金額は公表されていない。
海能風電は台湾北西部・苗栗県沖に位置し、総設備容量は376MW。47基のSiemens Gamesa製8MW級風車を採用し、2024年9月に商業運転を開始した。年間発電量は約38万世帯分の電力消費に相当するとされる。
同プロジェクトは、JERA、Macquarie Asset Management傘下のGreen Investment Group、Synera Renewable Energyによって開発された。2026年にはSyneraとJERAが関連債務のリファイナンスを実施しており、運転開始後の資産最適化が進んでいた。
年金マネー、台湾洋上風力へ本格参入
PSPIBは、カナダ連邦公務員、国軍、王立カナダ騎馬警察などの年金基金を運用する同国有数の機関投資家である。2026年3月末時点の運用資産残高(AUM)は3,206億カナダドルに達し、インフラ資産だけでも約320億カナダドルを保有する。
近年は再生可能エネルギー、送電網、低炭素インフラへの投資を拡大しており、欧州、北米、アジア太平洋、中南米に投資網を広げている。グリーンボンドの発行や持続可能エネルギー投資戦略の強化も進めており、洋上風力は長期資本を投下する重点分野の一つとなっている。
年金基金にとって洋上風力は短期的なエネルギー取引ではなく、長期負債に対応するインフラ資産としての性格が強い。海能風電は台湾電力(Taiwan Power Company)と20年間の売電契約(PPA)を締結済みで、安定したキャッシュフローが期待できる点が、長期投資家にとって魅力となる。
「開発期」から「運営期」へ
国際エネルギー機関(IEA)は、2025年の世界のエネルギー投資額が3.3兆ドルに達し、このうちクリーンエネルギー関連投資が約2.2兆ドルを占めると予測している。再生可能エネルギー、送電網、蓄電池、低炭素燃料などへの投資は、化石燃料関連投資の約2倍の規模となる見込みだ。
一方で、洋上風力を取り巻く環境は必ずしも順風ではない。建設コスト上昇、サプライチェーン逼迫、高金利環境などを背景に、投資家は安定収益が見込める運転中資産への選別を強めている。
世界のエネルギー市場では近年、「大手エネルギー企業が成熟した再生可能エネルギー資産を売却し、年金基金や保険会社、インフラファンドなどの長期資金が取得する」という構図が広がっている。開発事業者は資金を回収して新規案件に再投資できる一方、長期投資家は稼働済み資産から安定収益を得られるためだ。
台湾でも洋上風力市場は、建設主体のフェーズから運営主体のフェーズへ移行しつつある。海能風電へのPSPIB参画は単なる株主構成変更にとどまらず、台湾の洋上風力が国際的な長期インフラ投資の対象として評価され始めたことを示す事例といえる。
台湾政府はエネルギー転換政策の一環として洋上風力導入を継続的に拡大する方針を掲げている。今後、運転開始済み案件への海外年金マネー流入が加速するかどうかが、台湾洋上風力市場の成熟度を測る重要な指標となりそうだ。
参考資料:RenewablesNow
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