東京ガス、福島沖の浮体式洋上風力開発を断念と報道 技術開発と採算確保に隔たり
2026/10/26
福島県沖で実施された浮体式洋上風力発電の実証研究事業(2016年7月撮影、出典:経済産業省)
日本経済新聞の10月25日の報道によると、東京ガスは福島県楢葉町・富岡町沖で検討していた浮体式洋上風力発電の事業化を断念した。建設費の上昇で採算の確保が難しいと判断したという。一方、同社は大型風車に対応する浮体式設備の技術開発を進めており、商用化に向けた設計の進展と、個別事業の投資判断との隔たりが浮き彫りになった。
15MW風車2基、計30MWを計画
福島沖の計画は、東京ガスと信夫山福島電力が2023年2月に検討開始を発表した。福島県の公表資料によると、楢葉町・富岡町の沖合約20キロメートルに、出力15メガワット(MW)の風車2基を設置する構想で、合計出力は30MW。同月には環境影響評価方法書の縦覧を始めていた。
両社は、米プリンシプル・パワー(Principle Power, Inc.)の浮体技術を採用し、福島沖で実施された浮体式洋上風力の実証研究で得られた知見を活用する方針だった。東京ガスは2020年に同社へ出資しており、海外で実績のある技術を国内の事業開発につなげる狙いがあった。
日経によると、2027年の設置を検討していたが、建設費の高騰が事業化の障壁となった。今回の福島沖の計画は、政府の公募で事業者が選定された洋上風力案件とは異なる。
浮体式の技術開発は継続
福島沖の事業化断念を、浮体式洋上風力からの全面撤退と捉えることはできない。
東京ガスは10月13日、プリンシプル・パワーと共同で、15MW級の浮体式洋上風力発電設備について日本海事協会から基本設計承認(AiP)を取得したと発表している。
対象は日本の気象・海象条件を想定した設備で、風車や浮体、係留システムの挙動を解析し、水槽試験も実施した。ただ、AiPは基本設計段階の技術的な実現可能性などを評価するもので、個別発電所の建設決定や採算性を保証するものではない。
浮体式は、水深の深い海域にも設置でき、日本で洋上風力の導入海域を広げる技術として期待される。一方、浮体や係留設備に加え、施工・保守を担う供給網の整備が必要となる。東京ガスも、商用化に向けた課題としてコスト低減と国内サプライチェーンの整備を挙げている。
着床式を軸に、事業環境を見極め
東京ガスは着床式の洋上風力にも参画している。丸紅などと進める山形県遊佐町沖の計画は、出力450MWの発電所を建設するもので、2024年12月に政府の公募で選定された。
日経は、同社が当面は他海域の着床式に経営資源を集中し、政府支援や建設費の動向を踏まえて浮体式の開発方針を検討すると報じた。福島沖での開発再開の可能性も残るとしている。
今回の報道は、浮体式の普及には技術面の検証だけでなく、投資を回収できる事業条件の整備が欠かせないことを示唆する。設計・施工の効率化や供給網の構築を、実際のコスト低減につなげられるかが、商用化を左右する。
参考資料:NIKKEI





