ペロブスカイト量産支援、リコーと長州産業を採択 国内生産と市場形成を後押し
2026/10/27
インクジェット印刷技術を用いてリコーが作製したペロブスカイト太陽電池(出典:リコー)
次世代太陽電池「ペロブスカイト」の国内量産に向けた支援が進んでいる。経済産業省の「GXサプライチェーン構築支援事業」は10月27日、フィルム型でリコー、タンデム型で長州産業を採択したと公表した。製造基盤の整備に加え、建物への施工技術開発や導入支援も進み、研究開発から事業化への動きが広がっている。
公表資料によると、リコーの主な事業実施場所は宮城県名取市で、対象事業に要する経費は295億8000万円、補助金交付申請額は98億6000万円。長州産業は山口県山陽小野田市で太陽電池セル・モジュールの生産に取り組み、事業経費は75億8670万円、補助金交付申請額は37億9335万円となっている。両社の申請額は合計約136億5000万円に上る。
日本経済新聞は10月26日、政府が両社に対し、2029年度までの4年間で約1000億円を拠出する見通しだと報じた。ただし、今回の採択資料に記載された申請額とは異なり、両者の関係や今後の支援総額は明らかになっていない。資料では、リコーへの実際の補助額は申請額と異なる可能性があり、長州産業への交付額は追加申請によって増額する可能性があるとしている。
リコーは印刷技術、長州産業はタンデム型で量産化へ
リコーは、複合機などで培ったインクジェット技術を活用し、フィルム型ペロブスカイト太陽電池の開発を進めている。独自の有機感光体技術と組み合わせ、レーザー加工や真空プロセスを使わずに各機能層を形成する技術により、生産性の向上とコスト低減を目指す。
同社は大和ハウス工業、NTTアノードエナジーと共同で、太陽電池の製造から施工、電装設計までを一体的に開発している。物流倉庫の屋根やデータセンターの外壁などへの設置を想定し、2025年に公表した実証計画では、2030年度に年間製造能力300MW以上、発電コスト1キロワット時当たり14円の達成を掲げた。
一方、長州産業が取り組むのは、ペロブスカイトとシリコンを組み合わせるタンデム型だ。同社は2026年2月、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業への採択を発表。2030年度までに、面積1平方メートル以上の大型モジュールで変換効率30%以上、耐久性20年以上を目指す。これらは開発目標であり、量産品での達成実績を示すものではない。
積水化学とパナソニックも供給体制を整備
他の国内メーカーも事業化を進めている。積水化学工業と積水ソーラーフィルムは2026年3月、フィルム型製品「SOLAFIL」の事業開始を発表した。2026年度は既存設備による限定的な供給を進め、2027年度には100MW規模の生産ラインを立ち上げる計画だ。初期製品は金属屋根への設置を対象としている。
パナソニックホールディングスは10月20日、ガラス型ペロブスカイト太陽電池の本格量産開始を当初計画から1年前倒しし、2029年4月から滋賀県長浜市で生産すると発表した。2026年9月には先行量産品の販売を開始しており、窓や外装への導入を通じて施工・運用の知見を蓄積する。
軽量性を生かして屋根や壁面への設置を狙うフィルム型、窓などとの一体化を進めるガラス型、変換効率の向上を目指すタンデム型と、各社の開発は用途に応じて分かれている。
導入支援も拡充、施工と長期運用が課題
生産設備への投資支援と並行し、需要の創出に向けた施策も進む。環境省は10月15日、ペロブスカイト太陽電池の設備導入を支援する2026年度事業の二次公募を開始した。同種の建物への展開が見込める設置場所などへの導入を後押しし、初期段階の発電コスト低減と継続的な需要拡大につなげる。公募期限は11月20日正午。
各社の開発計画からは、量産設備の整備に加え、耐久性の向上や建物ごとの施工方法、設置条件に応じた電装設計が事業化の重要な課題となっていることがうかがえる。供給能力の拡大を実際の導入につなげるには、製造コストだけでなく、施工・運用を含めた経済性と信頼性を確立することが焦点となる。
参考資料:リコープレスリリース、長州産業、NIKKEI





