日英、洋上風力分野で戦略的連携を強化 日本企業に広がる英国市場参入の好機
2026/6/11

日英両政府は、2026年6月14日に予定される首脳会談において、洋上風力発電分野を中心とした戦略的協力の強化で合意する見通しとなった。日本企業4社が参画する英国での洋上風力関連事業は、今後10年間で最大90億ポンド(約1兆9,000億円)規模に達すると見込まれており、日本企業にとって欧州市場への本格展開を加速させる重要な契機となりそうだ。
英国は世界有数の洋上風力市場
英国は現在、世界最大級の洋上風力発電導入国の一つであり、再生可能エネルギー政策を国家戦略として推進している。特に近年は、従来の着床式に加え、水深の深い海域でも設置可能な「浮体式洋上風力」の商業化に注力しており、世界市場をリードする存在となっている。
今回の合意では、日英両政府が新たな協力枠組みを設立し、事業投資の促進、技術開発、サプライチェーンの構築、人材育成など幅広い分野で連携を進める。エネルギー安全保障の強化と脱炭素化を同時に実現することが狙いだ。
浮体式洋上風力がもたらす新たな市場機会
今回の協力で特に注目されるのが、浮体式洋上風力発電分野である。
日本は四方を海に囲まれた島国でありながら、沿岸部の多くが急深な地形となっているため、欧州で主流の着床式洋上風力の適地が限られている。一方、浮体式技術が普及すれば、日本近海でも大規模な洋上風力開発が可能となり、国内市場の拡大が期待されている。
そのため、日本企業にとって英国は単なる投資先ではなく、将来の国内事業展開に向けた技術・ノウハウを獲得する実証フィールドとしての意味合いも大きい。
首脳会談に合わせて、日本の「浮体式洋上風力技術研究組合(FLOWRA)」と英国の洋上再生可能エネルギー研究機関「ORE Catapult」が覚書(MOU)を締結する予定だ。両者は浮体構造物の設計、係留技術、施工効率化、保守運用の省人化などの分野で共同研究を進める。
日本企業に期待されるサプライチェーン参入
洋上風力産業は発電設備そのものだけでなく、多様な産業への波及効果を生み出す。
風車基礎、浮体構造物、海底ケーブル、変電設備、船舶、港湾インフラ、デジタル監視システムなど、多くの関連産業がサプライチェーンを構成している。
今回の協力枠組みでは、こうしたサプライチェーンの構築も重要なテーマとして位置付けられており、日本企業にとっては機器供給やエンジニアリングサービスへの参入機会が広がる可能性がある。
特に日本企業が強みを持つ製造技術、品質管理、海洋土木技術、重工業分野の知見は、今後拡大が見込まれる英国の洋上風力市場において高い競争力を発揮すると期待される。
エネルギー協力から先端技術協力へ
今回の首脳会談では、洋上風力に加え、半導体、量子技術、人工知能(AI)、次世代通信規格「6G」などの先端技術分野でも協力強化が打ち出される見通しだ。
半導体分野ではRapidusが英国の研究機関やAI関連企業との連携を深めるほか、量子コンピューティング分野では英国企業Orca Computingによる日本企業向け量子デバイス導入も計画されている。
また、6Gや衛星通信、光通信技術の研究開発に向けて、日英両政府は総額600万ポンド(約13億円)規模の共同研究公募を開始する予定であり、産学官連携によるイノベーション創出が期待される。
今後の注目点
世界的な脱炭素化の流れの中で、洋上風力発電は今後数十年にわたり成長が期待される分野の一つである。特に浮体式洋上風力は、欧州だけでなく日本、韓国、台湾、米国西海岸など水深の深い海域を抱える国々において市場拡大が見込まれている。
今回の日英協力は、単なるエネルギー政策上の連携にとどまらず、日本企業がグローバルな洋上風力市場へ参入するための足掛かりとなる可能性を秘めている。今後は具体的なプロジェクト形成やサプライチェーンへの参画状況が、両国協力の成果を測る重要な指標となりそうだ。
このコンテンツはWindTAIWANにて公開されたものであり、
ENERGYNIPPONとのコラボレーションにより共有されています。




