経産省、系統用蓄電池補助の評価基準見直し 出力制御抑制・国産セル・地域共生を重視
2026/8/7
画像:系統用蓄電池のイメージ図
経済産業省は7月28日に開催した「再生可能エネルギー主力電源化小委員会」で、令和7年度補正予算による「系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業」の公募方針見直し案を示した。再生可能エネルギーの導入拡大を背景に、再エネ出力制御の抑制、サプライチェーン強靱化、地域共生の3項目を新たな評価要件として追加する。
政府は近年、九州や北海道などで増加する再エネ出力制御への対応を課題としており、系統用蓄電池を需給調整力としてだけでなく、再エネ電力を時間的に移送するインフラとして活用する方向性を強めている。
卸電力市場での運用を高評価
見直し案では、「再エネ出力制御の抑制」に関し、系統用蓄電池の運用を現在主流の需給調整市場中心から、卸電力取引市場を活用したアービトラージ(裁定取引)型へ誘導する。
具体的には、年間取引電力量のうち、卸電力市場での取引量が一定割合以上となる事業計画を、採点審査で高く評価する。採択後は、事業者が計画通りに運用しているかを状況報告書で確認する仕組みとする。
また、将来的に系統混雑を緩和する新たな制度が整備された場合には、対象エリアにおいて一般送配電事業者との協議に応じることを必須要件とする方向だ。
長時間蓄電への関心高まる可能性
国内の系統用蓄電池は、4時間程度の放電時間を持つ設備が主流とされる。今回の見直しでは、昼間の余剰再エネを蓄え、夕方以降に放電するような卸市場を活用した運用が重視されるため、より長時間の充放電が可能な蓄電池への関心が高まる可能性がある。
もっとも、経産省の資料では、4時間型から8時間型への移行目標などを明示したわけではない。市場関係者の間では、将来的に6〜8時間級の長時間蓄電池への投資が拡大するとの見方も出ているが、現時点では市場動向に関する分析の域を出ていない。
経済安保法に基づく認定セルを優遇
「サプライチェーン強靱化」では、経済安全保障推進法に基づく供給確保計画の認定を受けたメーカーが製造したセルを使用する蓄電池を、採点審査で優遇する。
対象となるのは、認定メーカーが自社で保有する製造拠点で生産したセルに限られる。第三者工場への委託生産やOEM供給によるセルは対象外とし、国内の製造基盤強化を促す内容となっている。
政府は蓄電池を経済安全保障上の重要物資と位置付けており、海外依存度の高いセル供給網の強化を急いでいる。
騒音対策など地域配慮も評価
「地域共生」では、蓄電池の設置・運用に当たり、騒音対策や景観への配慮、防災対応など、地域住民との共生に向けた取り組みを計画している事業を高く評価する。
系統用蓄電池は変電所近接地だけでなく、再エネ適地周辺への立地も増えており、住民理解の確保が事業推進上の重要な課題となっている。
NITEガイドライン準拠も検討
経産省は今回の見直しに加え、再エネ出力制御抑制に関する要件や、製品評価技術基盤機構(NITE)の安全ガイドラインへの準拠についても、次年度以降に予算措置が継続される場合は評価項目に盛り込む方向を示した。
系統用蓄電池市場は、再エネ大量導入を支える基盤インフラとして急速に拡大している。今回の制度見直しは、単なる導入量の拡大から、再エネ活用への実効性、国内サプライチェーンの確保、地域との調和を重視する段階へ政策が移行しつつあることを示している。
参考資料
- 資源エネルギー庁「再生可能エネルギー主力電源化小委員会」第75回(2026年7月28日)
- 配布資料「系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業の見直しについて(案)」
- 資源エネルギー庁「令和7年度補正『再生可能エネルギー導入拡大・系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業費補助金』に係る補助事業者(執行団体)の公募について」





